Amazon.co.jp
コルトレーンは、62年から63年にかけて、『バラード』『ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン』『デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン』という3枚のバラード作品を録音した。マウスピースの調子が悪く、本来の演奏ができなかったため、苦肉の策としてバラードに取り組んだともいわれている。だがもしそうだとしたら、具合の悪かったマウスピースに感謝したい。なぜなら、これら一連のバラード作品には、コルトレーンの優しさが凝縮しているからだ。
本作は、黄金のコルトレーン・カルテットをバックに、ジョニー・ハートマンがつややかなバリトン・ヴォイスで朗々と歌っている作品だ。冒頭の<1>が流れだした瞬間、すっかりその世界に引きこまれる。思いきりスローなテンポで歌うハートマン、そこに絡むコルトレーンのオブリガートが見事だ。リリカルなマッコイ・タイナーのピアノも印象的である。<2>はシナトラが53年にヒットさせた、きわめつけのラヴ・バラード。コルトレーンのアドリブはゼロだが、立派にジャズになっているところがすごい。(市川正二)